泉美知子(國學院大學)、橋本周子(滋賀県立大学)、開会: 北村一郎 (日仏会館学術委員長)、コメンテーター:篠田勝英 (白百合女子大学、日仏会館学術委員)、廣田功 (帝京大学、日仏会館学術委員)
14:00~14:10
開会 日仏会館学術委員長 北村一郎
14:10~14:55
泉美知子 (本賞受賞)
「ゴシック大聖堂の国民化―19世紀末から20世紀初頭における美術史家の役割」
14:55~15:25
質疑 コメンテーター 篠田勝英 (白百合女子大学、日仏会館学術委員)
15:25~15:40
休憩
15:40~16:25
橋本周子 (ルイ・ヴィトン・ジャパン特別賞受賞)
「〈美食〉概念の変容:グリモ・ド・ラ・レニエール (1758-1837)とフランス革命」
16:25~16:55
質疑 コメンテーター 廣田功 (帝京大学、日仏会館学術委員)
終了後、懇親会を行います
泉美知子
「ゴシック大聖堂の国民化――19世紀末から20世紀初頭における美術史家の役割」
La nationalisation de la cathédrale gothique : le rôle des historiens de l’art entre la fin du XIXe siècle et le début du XXe siècle
19世紀フランスは、ギリシア・ローマとは異質な自国のキリスト教中世の遺産を再発見し、復権させてゆく。美術館の創設によって、文化財保護の制度化によって、美術史学の成立によって、そして芸術家や愛好家による破壊との闘いによって、中世のゴシック大聖堂は国民遺産となった。この国民化の歩みは20世紀にも引き継がれるが、とりわけ大きな飛躍を見せるのが第一次世界大戦である。1914年9月にランス大聖堂が砲撃を受けた事件は、炎上する大聖堂のイメージとともに新聞や雑誌によって広く喧伝され、国民感情を高ぶらせた。ゴシック大聖堂の国民化において、美術史家はどのような役割を果たしたのだろう。ランス大聖堂を中心に、国民芸術の創出について考えたい。
橋本周子
「〈美食〉概念の変容:グリモ・ド・ラ・レニエール(1758-1837)とフランス革命」
La transformation de la notion de gourmandise : Grimod de la Reynière et la
Révolution française
今日、「美食」はフランスの魅力的な文化を語るうえで欠かすことのできないキーワードとなっています。しかしこの語は長く否定的なニュアンスを帯び、これが肯定的な意味で用いられるようになるのはおよそ19世紀以降のことに過ぎません。今回は、その変容をたどりつつ、なぜそのような価値の転換が可能になったのか、その社会的背景をグリモ・ド・ラ・レニエールの視線を通じて考えてみようと思います。フランス革命をまたぐ生涯を生きたグリモにとって〈美食〉は、かつての社会に生きた人々の思考や良き習慣を、新たな時代へと幸福な形で接続する格好の素材にほかなりませんでした。グリモのテクストをそのような観点から読み解くことは、現在なお続く、この国の社交的な食卓の楽しみのルーツについて考えるきっかけになるにちがいありません。