アンヌ・チャン (コレージュ・ド・フランス)、中島隆博(東京大学東洋文化研究所)ひ司会 クリストフ・マルケ(日仏会館フランス事務所)
主催: 公益財団法人日仏会館、日仏会館フランス事務所
普遍性の出現は、ヨーロッパにおける啓蒙主義の哲学や「理性の勝利」の産物だと一般に考えられているが、中国における普遍性は、中心から周辺へと拡散していくような文明観と強く結びついている。実際に、そうした文明観に基づいて、帝国の影響力は行使されてきた。
この拡散する力の及ぶ地理的な範囲が「中国化した世界」だったのであり、東アジアの大部分を広く覆っている。中華帝国を自ら「文明=世界」とするような表現は、植民地主義的な列強の介入や近代日本において批判が展開される19世紀になって初めて問題となった。そして、この中国=世界の普遍性こそが、いま現在、「大きな中国」というイデオロギーのなかで活気を取り戻しつつあるのだ。
アンヌ・チャン
現在、コレージュ・ド・フランスで中国思想史の教授を務める。思想史が専門で、とりわけ中国や近隣の文化圏における儒教の歴史に関心を持っている。『論語』の仏語訳 Entretiens de Confucius (Seuil, 1981)のほか、Histoire de la pensée chinoise (Seuil, 1997), (アンヌ・チャン著『中国思想史』志野好伸、中島隆博、廣瀬玲子訳 知泉書館 2010年)などの著書がある。
中島隆博
東京大学東洋文化研究所准教授